AI初心者ガイド

AIに店番を任せたら?

AIは使えないという話ではありません。開発元が自社で実験して赤字を出した記録から、任せてよい仕事の境目を読み取ります

2026-06-08読了 約8志水 康太志水 康太

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AIに会社の売店を任せたら、どうなった?|Anthropicの実験から学ぶAIの「使いどころ」のサムネイル
画像は生成イメージです。
この記事でわかること
  • AnthropicがClaudeに自販機を任せた実験「Project Vend」の概要
  • 実験で起きた3つの迷走
  • なぜAIは「店長」になれなかったのか
  • 三河の事業者がこの実話から学べる3つの視点

「AIに会社の業務を任せたら、本当に回るのか」。経営者として一度は考える問いです。これに正面から答えた実験があります。AIを開発するAnthropicが2025年、社内に置いた自販機の運営をAI(Claude)に約1ヶ月間任せた「Project Vend」です。

結論を先に書きます。AIに丸投げした初期実験は赤字に終わりました。ただしその後、人の監督役を加えた改良版では割引要求が約80%減るなど、明確に改善しています。この記事では公式発表をもとに、AIに任せる時の境界線と、自社で取り入れる時の視点を整理します。

Anthropicが自社の売店をAIに任せた実験「Project Vend」

Anthropicは、Claudeを開発しているAI企業です。同社は2025年、社内に置いたミニ冷蔵庫型の自販機の運営を、Claudeに約1ヶ月間任せる実験を実施しました。Claudeには「Claudius」というあだ名が付けられ、仕入先の選定、在庫管理、価格設定、顧客対応、再注文までを自律的に判断する役割を担いました。物理的な補充作業だけは、運営パートナーのAndon Labsが担当しました。

実験で起きた3つの迷走

Phase 1の実験では、Claudeはいくつかの判断ミスを重ねて赤字を出しました。公式発表と報道をもとに、特に注目された3つを整理します。読み物として笑える話ですが、AIに業務を任せる時の本質が詰まっています。

実験で起きた3つの迷走(公式発表・報道ベース)

タングステンキューブ事件
何が起きたか
従業員の冗談リクエストから金属キューブを大量仕入れし、原価割れで販売した(赤字の主因と公式明記)。
なぜ起きたか
「売れるか」より「頼まれたら応える」を優先したため。
値引き乱発
何が起きたか
割引コードを出し続け、PS5や熱帯魚、ワインを無償で提供した例も報告されている。
なぜ起きたか
顧客満足を最大化しようとして、長期的な利益判断を失ったため。
自分を人間だと思い込む
何が起きたか
「青いブレザーと赤いネクタイで配達に行く」と主張し、社内セキュリティに何度も連絡した。
なぜ起きたか
役を演じ続けるうちに、AIと人間の境界が崩れたため。
▲ 画像は生成イメージ。AIに任せる業務は、まず小さく試して人が確認できる規模から始めると、迷走に気づく余地が残ります。

なぜAIは「店長」になれなかったのか

公式発表とこれまでのAI研究を合わせて見ると、Claudeが店長として失敗した理由は3つに整理できます。AIに業務を任せる時に、経営者として知っておきたい性質です。

  • 頼まれた依頼に応えようとする性質が強いため、不採算な要望でも引き受けやすい。
  • 一回ごとの対応では適切でも、長期的な収益や在庫の整合を保つ判断が弱い。
  • 自分の役割や立場の境界を、自分自身で守り続けることが難しい。

Phase 2で改善したこと

Anthropicは2025年12月18日、改良版のPhase 2を発表しました。仮想の上司役を置き、目標と判断ルールを明示するというシンプルな変更で、失敗の多くが減りました。

Phase 1とPhase 2の比較

体制
Phase 1(失敗)
Claudeが一人で全判断
Phase 2(改善)
仮想CEO「Seymour Cash」が監督役
目標設定
Phase 1(失敗)
曖昧
Phase 2(改善)
四半期OKRを明示
新商品の判断
Phase 1(失敗)
Claude単独で価格決定
Phase 2(改善)
価格・納期をツールで二重確認
結果
Phase 1(失敗)
割引乱発・赤字
Phase 2(改善)
割引要求が約80%減・無料配布が約50%減(同社発表)

Phase 2では実験規模も拡大し、サンフランシスコ2拠点、ニューヨーク、ロンドンへ展開しました。完全にAIだけで運営する難しさを認めつつ、人の監督役を加えた「AI+人」の形が現実的な落としどころだという示唆が得られています。

三河の事業者がこの実話から学べる3つの視点

Project Vendは大企業の実験ですが、三河・愛知の中小企業がAIを業務に取り入れる時の参考になる視点が含まれています。3つに整理しました。

実話から学ぶ3つの視点

  1. 01

    小さく試す

    いきなり業務全体をAIに任せず、1つの工程(問い合わせ返信の下書き、SNS投稿の下書き、議事録の要約など)から始める。

  2. 02

    人が「最後の判断」を持つ

    AIに下書きや候補出しを任せても、価格・契約・顧客対応の最終判断は人が決める。この役割分担を最初に決めておく。

  3. 03

    定型業務から始める

    毎日繰り返す作業はAIと相性がよい。逆に、現場のベテランの勘や交渉、地域特有の関係づくりは、まだ人の領域として残す。

これだけは覚えて帰ってほしいこと
  • 1AnthropicがClaudeに自社売店の運営を任せた実験がProject Vend。結果は赤字だった
  • 2迷走1。従業員の冗談リクエストから金属キューブを大量仕入れし、原価割れで販売した(赤字の主因と公式が明記)
  • 3迷走2。割引コードを出し続け、PS5・熱帯魚・ワインを無償提供した例も報告された
  • 4迷走3。「青いブレザーと赤いネクタイで配達に行く」と主張し、社内セキュリティに何度も連絡した
  • 5原因は性能ではなく性質。頼まれたら応えようとする力が強く、長期的な収益判断と、自分の役割の境界を保つことが苦手
  • 6学べる視点は3つ。小さく試す、人が最後の判断を持つ、定型業務から始める
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本記事は「東三河の経営者が知っておきたいAIネイティブシリーズ(全4回)」の第1回です。次回は「『AIで効率化』と『AIネイティブ』は何が違う?」を予定しています。

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タグ
#AIネイティブ#AI活用#Anthropic#Project Vend#Claude#AIの限界#経営者#三河
志水 康太

志水 康太

合同会社ICHI 代表 / AIコンサルタント

理学療法士として医療・介護の現場で10年以上働いたのち、2023年に合同会社ICHIを設立。三河・東三河の中小企業でAI顧問・研修・アプリ開発を手がけています。記事は現場で実際に使えるかを基準に書いています。

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