AI初心者ガイド

高校91%まで進んだ校務AI

「AIを使える若手を採用する」話ではありません。学校で3年に起きた変化を、今いる社員と自社をどう動かすかに翻訳します

2026-09-01読了 約10志水 康太志水 康太

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全国の高校でAIが91%まで進んだ。三河の中小企業が向き合う「AIと育った若手」の話のサムネイル
この記事でわかること
  • 学校の校務でAIを使う教員が91%まで進んだ事実
  • 全く使っていない教職員が16.3%まで減った変化のスピード
  • 3〜5年で社会人になる若手と向き合う時間軸
  • 既存社員と一緒に始める業種別の入口(建設業・飲食業・小売業)
  • 採用面接で会話素材として使える論点
  • 自社が効率化フェーズかネイティブ化フェーズかの判定
  • 社内ルール整備の入口
  • 連載第2弾の予告

この記事は、連載「社員と一緒に育つAI|中小企業の人材育成シリーズ」の第1弾です。テーマは「採用優位」ではありません。これから入社してくる若手と、今いる社員と、経営者自身が、一緒にAIと向き合う時間をどう作るか、という話です。

前提として「学校でAIが進んでいる=若手はみんなAIを使いこなせる」とは書きません。実際に進んでいるのは「教員側」です。生徒・学生がどれくらい使いこなしているかは、教員調査の数字からは直接は読み取れません。ここを混ぜずに、事実は事実として読み、そのうえで三河・愛知の中小企業の経営者がどう備えるかを整理します。

何が起きたか。教員91%・全く活用なしが16.3%という数字

2025年11〜12月、株式会社MM総研が全国の小中学校・高等学校の教員2,062名を対象に、校務でのAI利用実態を調査しました。結果の核は次の3つの数字です。出典はMM総研 2025年11-12月調査プレスリリースです。

  • 校務でAIを使う教員は全体で56%。「校務」は授業準備・資料作成・保護者向け文書・テスト作問など、教員が日々こなす事務寄りの仕事を指します
  • 公立高校に絞ると、その割合は91%まで上がります。10人中9人の高校教員が、校務のどこかでAIを使っている計算です
  • 使っているサービスの68%は、Google Workspace(GeminiやNotebookLM)またはMicrosoft 365(Copilot)の中のAI機能です。個人版ChatGPTを使っているのは1%にとどまります

主語はすべて「教員」です。生徒や学生がAIをどれくらい使いこなしているか、という調査ではありません。同じ調査のなかで「課題を感じている」と答えた教員は81%にのぼり、内訳はセキュリティ42%・著作権41%・ルール整備39%でした。学校側も、便利だから無条件に使っているわけではなく、課題と並走しながら使っています。この温度感は、中小企業の経営者にも伝わる感覚だと思います。

もう一つ、文部科学省が2026年4月30日に公表した「学校教育におけるAI活用に関するこれまでの取組」(文部科学省 公表資料PDF)に重要な推移データがあります。「校務でAIを全く活用していない教職員」の割合の推移です。

  • 令和5年度(R5):76.7%
  • 令和6年度(R6):58.9%
  • 令和7年度(R7):16.3%

3年で「全く活用していない教職員」が76.7%から16.3%まで減りました。1年で約20〜40ポイントずつ動いています。さらに同じ資料には、教職員の半数以上がAIを活用した学校では98%が「働き方の改善に効果があった」と回答したとの記載もあります。「使う側」の景色が、3年でこれだけ変わったということです。

パイロット校(生成AI活用の指定校)の拡大も急です。同資料によると、R6年度66校、R7年度281校、R8年度478校と1年で約1.7倍ずつ増えています。指定教育委員会には愛知県・名古屋市・春日井市・知多市・一宮市が含まれます。愛知県内も例外ではありません。

▲ 出典:MM総研2025年11-12月調査/文科省R7調査

これが意味すること。3〜5年で社会人になる若手と向き合う時間軸

もう一度書きます。学校で進んでいるのは「教員側」の校務利用です。生徒・学生本人がAIをどれくらい日常的に使いこなしているかは、この調査からは直接は読み取れません。「だから新卒はみんなAIが使える」という飛躍はしないでください。ここを断定すると、入社後の現場で「思っていたのと違う」という事故が起きます。

では、何が言えるか。少なくとも次の3つは事実として置けます。

  • 今、高校に通っている生徒の周辺で「先生がAIを使って授業準備や資料を作る」のは珍しくなくなっている
  • パイロット校では、生徒自身が生成AIに触れる機会も設計されている(文部科学省 公表資料)
  • 3〜5年で社会人になる若手は、学校でAIに「触れた経験」を持って入社してくる可能性が、今までの世代より明確に高い

逆に、断定できないことも整理しておきます。「AIを業務で使いこなせるレベル」と「学校で触れた経験がある」は別物です。三河の中小企業の現場で求められるのは、見積書の文面を整える、取引先メールの温度感を保つ、議事録の要点を抜き出す、といった「自社の業務に合わせて使う」レベルです。これは入社後に身に着けるもので、学校教育で完成して入ってくる類のものではありません。

つまり、経営者がやるべき準備は「AIを使える若手を採用する」ではなく、「入社してきた若手・今いる社員と一緒に、自社の業務でAIをどう使うかを決めていく」側です。これが、本連載が「採用」ではなく「人材育成」をテーマにする理由です。

時間軸はもう一つあります。3年で「全く活用していない教職員」が76.7%→16.3%まで動いた事実は、「社会全体のAI導入カーブが、想像より急だった」ことを示唆します。経営者として「うちはまだ早い」と判断するのは選択肢の一つですが、その判断は「3年後に同じ判断をしている前提で考えていいか」を一度確認してから下した方が安全です。

今いる社員と一緒にやれること

新卒採用の話を一旦置きます。「今いる社員(パート従業員を含む)と一緒に、自社の業務でAIをどう使い始めるか」が、経営者にとっては先に来る問いです。共通する考え方は「既存社員と一緒に育つ」ことです。社長一人がAIを覚えて指示する形ではなく、現場の人と一緒に画面を見て試す形を想定します。

建設業・飲食業・小売業それぞれの具体的な入口と、明日から使えるプロンプトは社員と一緒に始めるAI|三河の業種別3入口にまとめてあります。手を動かす段階に入るときはそちらを開いてください。この記事では、その前に経営者が押さえておく「なぜ今なのか」と「自社のフェーズ」を扱います。

採用面接で会話素材として使えること

本連載は採用優位の話ではないと書きました。ただし、これから入社してくる若手と面接で会話するときの「素材」としては、今回の数字は十分に使えます。「AIが使える人を選ぶ」のではなく、「AIをどう使ったか・使う意欲はあるか」を会話するための入口、という位置づけです。

面接で聞く質問の例を3つ置きます。どれも合否を決めるための質問ではなく、入社後の育成方針を決めるための質問です。

  • 「学校で先生がAIを使って授業準備をしている、という話を見聞きしたことはありますか」(事実認識のレベル感を聞く)
  • 「ChatGPTやGeminiなどのAIを、自分で何かに使ってみたことはありますか。差し支えなければ、どんな場面だったか教えてください」(経験の質を聞く)
  • 「もし入社したら、業務のなかでAIに手伝ってほしい場面はありそうですか」(入社後の関心の方向を聞く)

3つに共通するのは、「正解」を求めない聞き方です。「使ったことがない」と答えた候補者を落とすための質問ではありません。むしろ、「使ったことがない人を、入社後にどう育てていくか」の前提を、面接の場で経営者側が掴むための質問です。求人票や採用面接シートの作り方は、シリーズ別記事求人票・採用文章をAIで作る方法で詳しく扱っています。

入社後30日の受け入れ設計までを含めて、AIを使った若手育成の流れを作りたい場合は、採用後30日のオンボーディングをAIで設計する方法が参考になります。今回の数字は、その入口にある「面接の会話」のレベルで触れる素材として使うのが現実的です。

自社のフェーズ判定。効率化か、業務の組み直しか

もう一段、経営判断の軸を置きます。上で触れた「業種別の入口」は、別記事「AIで効率化」と「AIネイティブ」は何が違う?で言う「効率化フェーズ」の使い方です。今ある業務を、社員と一緒に少し速くする・楽にする使い方です。

一方で「業務の組み立て自体を変える」段階に踏み込んでいる会社もあります。たとえば現場日報を「人が書く」前提を捨て、「AIが下書き、人が承認」に組み直す。顧客対応メールを「店員が書く」前提から、「AIが下書きを並べ、店員が選んで送る」に変える。これは効率化ではなく、業務フローの組み直しです。「ネイティブ化フェーズ」と呼ばれる領域に近づきます。

自社がどちらのフェーズにいるかを、1問で頭の整理に使えます。「もし社内のAIアカウントを全部止めたら、自社の業務は今のままで回るか」。回るなら効率化フェーズ。回らない(または止まるところがある)ならネイティブ化フェーズに踏み込んでいます。

この問いは、社員や若手と一緒にAIを使い始めるときの「進度の合わせ方」を決める役にも立ちます。自社が効率化フェーズなら、若手と一緒に「今ある業務を少し楽にする」入口から始めるのが現実的です。ネイティブ化フェーズに踏み込んでいる会社は、若手にも「業務フローの組み直し」の議論に参加してもらう設計が考えられます。フェーズの違いは、人材育成の設計図の違いに直結します。

▲ 経営者が頭の整理に使う問い:「AIを全部止めたら自社の業務は回るか」

社内ルールは「変わらない原則」と「変えていく運用」を分ける

社員と一緒にAIを使い始めると、必ず「会社としてのルールはどうするか」という話になります。学校の現場でも同じです。先述のMM総研調査で「課題あり」と答えた教員のうち、39%が「ルール整備」を挙げています。経営者が頭を抱える領域でもあります。

一つの考え方として、教育AI活用協会が公開している協会ニュースリリース(2026年4月24日)が参考になります。要点を中小企業の経営者向けに翻訳すると、「変わらない原則(個人情報を渡さない・最終判断は人がする・自社の業務情報は会社が決めた場所でやる)」と「変えていく運用(使うツール・依頼の仕方・社内の共有方法)」を分けて設計するという考え方です。

原則は分厚い文書にする必要はありません。最初はA4一枚で十分です。「お客様の名前は入れない」「最終的に送る前に必ず人が読む」「会社の業務で使うときは、会社が決めたツール上でやる」。この3行があれば、社員と一緒に始める入口は守れます。運用ルールはやりながら少しずつ整えていく前提で構えるのが、現実的な進め方です。

連載第1弾を「採用」ではなく「人材育成」で書いた理由

この記事は、本当は「採用優位」の話として書くこともできました。「AIを使える若手が欲しいなら、今から準備した方がいい」という切り口です。実際、編集会議のなかでもその方向の案が出ていました。ただ、最終的に「採用」ではなく「人材育成」で書くと決めた理由があります。

三河の中小企業の経営者の多くにとって、今日明日の課題は「これから入る新卒」よりも、「今いる社員と一緒に、どうやって会社を回していくか」です。学校でAIが進んでいる事実を「採用優位」の話にすると、今いる社員の話が抜け落ちます。これは媒体として、地元の経営者に対して不誠実です。

今回の数字(教員91%・全く活用なし16.3%・効果98%)が経営者に教えてくれるのは、「使う側の景色は3年で大きく動く」という事実です。これは採用の話の前に、今いる社員と一緒に少しずつ動き始めた方がいい、というメッセージとして受け取るのが、媒体として推奨したい読み方です。

次回(連載第2弾)は、「社員研修の始め方」を扱います。社長一人ではなく、3〜5人のチームで月1回1時間からAIを試す設計を、現場で使える形に分解して書く予定です。三河の中小企業の業種別の使い方は中小企業のAI活用5場面もあわせて参考にしてください。

これだけは覚えて帰ってほしいこと
  • 1校務でAIを使う教員は91%。「全く活用していない教職員」は3年で76.7%→16.3%まで落ちた(主語は生徒ではなく教員)
  • 2断定できるのは「使う側の景色は3年で動く」ことまで。学校で触れた経験と、業務で使いこなせることは別物
  • 3だから準備は「AIを使える若手を採る」ではなく「入ってくる若手・今いる社員と一緒に、自社の業務でどう使うかを決める」側
  • 4面接でAIの話を出すなら、合否を決める質問ではなく入社後の育成方針を決める素材として聞く
  • 5自社のフェーズは1問で判定できる。「社内のAIアカウントを全部止めたら業務は回るか」。回るなら効率化フェーズ
  • 6社内ルールは「変わらない原則」と「変えていく運用」を分ける。原則はA4一枚で足りる
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タグ
#人材育成#採用#若手#社員#三河#愛知#中小企業#AI教育#経営者
志水 康太

志水 康太

合同会社ICHI 代表 / AIコンサルタント

理学療法士として医療・介護の現場で10年以上働いたのち、2023年に合同会社ICHIを設立。三河・東三河の中小企業でAI顧問・研修・アプリ開発を手がけています。記事は現場で実際に使えるかを基準に書いています。

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