- 低評価のクチコミにAIで返信文を作ると何が起きるか(実際に試した出力あり)
- Googleの公式仕様で分かる3つのこと
- 返信は投稿者にも通知が届き、投稿者は後からクチコミを変更できる
- 事業者側にも禁止事項がある
- AIに任せる部分と、経営者が決める部分の分け方
- 返信しない方がいい場合
朝、店を開ける前にスマホを見たら、星2つが付いている。待ち時間と料金のことが書かれていて、最後は「二度と行きません」。心当たりがある日かもしれないし、まったく覚えがないかもしれません。
この記事は、返信文の書き方を教えるものではありません。書く前に何を確認して、どこまで謝るかを決める話です。そこを飛ばして文章だけ先に作ると、確認していないことを店が認めた公開記録が残ります。
まず、公式の仕様を確認する
Googleビジネスプロフィールのヘルプに書かれていることのうち、返信の書き方を左右するものが3つあります。
- 返信すると、クチコミを書いた人に通知が届く。そして投稿者は、返信を読んだあとでクチコミを変更できる
- 返信は公開後も編集・削除できる。一度出したら直せない、ということはない
- 返信はGoogleの審査を通る。通常10分以内、長い場合は30日かかることがある
1つ目が特に効きます。返信は「他のお客さんに向けた弁明」だと思われがちですが、書いた本人に直接届きます。そして本人はクチコミを書き換えられます。つまり返信は、評価そのものを動かしうる相手への連絡です。
ICHI.へ相談するもう1つ、事業者側にも禁止事項があります。Googleのコンテンツポリシーでは、否定的なクチコミの投稿を妨げる行為や、特典と引き換えにクチコミの修正・削除を求める行為が禁じられています。返信で「削除していただけませんか」「お詫びの品をお送りしますので」と書くのは、この線を越えます。
返信にメールアドレスやリンクを書くことも宣伝とみなされます。「詳しくはお電話で」と連絡先を並べたくなりますが、そこは抑えます。
AIに「返信文を書いて」と頼むと、どうなるか
実際に試しました。まず、検証用に架空のクチコミを用意します。実在のクチコミは使いません。引用すると店が特定されるためです。
【星2】 予約の時間に行ったのに30分以上待たされました。その間、説明も謝罪もありません。 料金も、聞いていた金額と違いました。追加料金の説明が後出しです。 二度と行きません。
これを「次のクチコミへの返信文を書いてください」とだけ指示して投げました。返ってきたのが次の文章です。AIが実際に出力したものです。
この度はご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございませんでした。 ご予約のお時間に30分以上お待たせしたにもかかわらず、その間ご説明も謝罪もできていなかったこと、深くお詫び申し上げます。本来であれば、お待たせする時点で状況をお伝えし、お詫びするべきでした。 また、料金についても事前にお伝えしていた金額と異なり、追加料金のご説明が後になってしまった点、こちらの対応が不十分でした。
文章としてはよくできています。すぐ使えそうに見えます。問題は、ここに書かれていることを誰も確認していない点です。
「30分以上お待たせした」「説明も謝罪もできていなかった」「事前にお伝えしていた金額と異なり」。どれもクチコミに書かれていた投稿者の言い分であって、店の記録と照らしたものではありません。AIは記録を持っていないので、書かれていることをそのまま事実として受け取り、全面的に非を認める文章にしました。
これを公開すると、店が事実関係を認めた記録が検索結果に残ります。実際には前のお客さんが延びただけかもしれないし、追加料金は当日に説明していたかもしれません。そこを確かめる前に、文章の方が先に出来上がってしまいます。
クチコミ返信で、AIに任せられる範囲
- 不満の項目を洗い出す
- 確認すべきことを一覧にする
- 決めた内容を文章に整える
- 言い回しを複数案つくる
- 何が実際に起きたか(記録と照合)
- どこまで謝るか
- 返金・割引をするか
- そもそも返信するか
文章より先に、確認事項を出させる
同じクチコミを、指示を変えて投げ直しました。返信文を書かせず、確認すべきことを先に出させます。
来店型の店に届いたクチコミです。返信を書く前の整理をしてください。 制約: ・クチコミの内容は「投稿者の主張」として扱い、店側の事実として確定させないでください。 ・待ち時間の長さ、料金の食い違い、説明の有無を、起きた事実として断定しないでください。 ・謝罪の範囲と補償の可否は判断しないでください。経営者が決めます。 ・返信文の完成版はまだ書かないでください。 出力: 1. クチコミから読み取れる不満の項目 2. 店側の記録で確認すべきこと 3. 確認が取れるまで返信に書いてはいけないこと (ここにクチコミを貼り付ける)
返ってきた「確認すべきこと」が、実際の業務に一番近いものでした。これもAIの実測出力です。
- 予約時刻・実際の来店時刻・開始時刻の記録
- 当日の混雑状況、前のお客さんの対応状況、スタッフのシフト
- 待ち時間について声かけをした記録の有無(本人が「なかった」と感じたかどうかは別問題)
- 予約時・来店時に案内していた料金(メニュー表・予約フォーム・口頭)
- 追加料金が発生した理由と、いつ説明したか
- そもそも投稿者を特定できるか。来店日時が一致する予約があるか
最後の項目が抜けやすいところです。クチコミは実名とは限りません。特定できないまま「先日はお待たせして」と書くと、別のお客さんの話を混ぜることになります。AIはここを「別の来店者と混同するリスクがある」と指摘してきました。
この2つの出力は、同じクチコミに対して指示を変えただけです。変えたのは「文章を書いて」か「確認することを出して」かの違いだけ。AIの性能の問題ではなく、何を頼むかの問題です。
ICHI.へ相談する返信しない方がいい場合もある
確認した結果、事実関係が食い違ったままになることがあります。その場合、無理に返信すると論争が公開の場で続きます。次のような場合は、返信を急がない方が安全です。
- 店の記録と投稿内容が明確に食い違っていて、どちらとも確定できない
- 返信すると、投稿者が誰か第三者に推測できてしまう
- 金銭の請求や法的な主張が含まれている(この場合は公開の場で答えない)
3つ目は特に線を引いてください。返信は公開されます。交渉の内容を書く場所ではありません。
- 1自店の低評価クチコミを1件だけ開いて、**店側の記録で確認できること**を書き出してください。返信文はそのあとです。確認できた範囲と、投稿者の受け止めに対する言葉を分けて書けば、事実を認めすぎずに応じられます。
この記事の作り方について。掲載したクチコミは検証用に作成した架空のもので、実在の投稿ではありません。AIの出力は2026年9月20日に実際に取得したもので、冒頭の定型文だけ除いています。公式仕様はGoogleビジネスプロフィールのヘルプおよびGoogleのコンテンツポリシー(いずれも同日に確認)に基づきます。ポリシーは変わることがあるため、実際の運用前に最新版をご確認ください。
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