- AIを入れた直後は仕事が増えるのが普通
- 増えるのは「確認」「判断」「段取り」の3つ
- 3つとも“決めていない”ことが原因
- 先に決める3つ(確認する人・やらないことの線・同時に回す上限)
- 増えた状態が落ち着くまでの見通し
AIを使い始めた会社から、しばらくして出てくる声はだいたい同じです。「思ったより楽になっていない」。導入前に想像していたのは、今の仕事がそのまま速く終わる状態でした。ところが実際には、前より忙しく感じる時期が先に来ます。
これは使い方が下手だから起きるわけではありません。AIの性質上、ほぼ必ず通る段階です。この記事では、何が増えるのかを3つに分けて整理し、増える量を抑えるために先に決めておくことをまとめます。
エイベックスの松浦勝人会長が、自身のnote連載「松浦勝人の人生論」をほぼAIで作成していることを2026年8月20日に発表し、翌21日にXでその経験を投稿しました。「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆でした」という発言が広く読まれています(ITmedia AI+、2026年8月21日)。記事末に出典を記載しています。
ICHI.へ相談するなぜ「楽になる」と思ってしまうのか
導入前に思い浮かべるのは、たいてい作業そのものが速くなる場面です。メールの下書きが3分で出る。議事録が10分で形になる。ここだけを見れば確かに速い。
ただ、仕事は「作業」だけでできているわけではありません。作ったものを確かめる時間、どれを採用するか決める時間、複数の案件を行き来する時間があります。AIが速くするのは作業の部分だけで、残りの3つはむしろ増えます。作業が速くなった分だけ、後ろの工程に流れ込む量が増えるからです。
増えるのは、この3つ
AIを入れた直後に増える3つの仕事
- 1確認の仕事出てきたものが正しいか、毎回たしかめる
- 2判断の仕事選択肢が増える。どれを採用し、何をやらないか決める
- 3段取りの仕事並行して回せるぶん、頭を切り替える回数が増える
① 確認の仕事
AIの出力は、そのまま外に出せません。金額、日付、固有名詞、相手の社名。間違っていたときに困る箇所ほど、人が見る必要があります。ここまでは想像がつくと思います。
見落としやすいのは、速く出てくるほど確認の総量が増えるという点です。今まで1日1本しか作れなかった資料が、1日5本作れるようになれば、確認も5本分になります。冒頭の松浦会長の例でも、たたき台を作ったあとAIと数十回やりとりしたと語られています。作る回数が増えるということは、見る回数も増えるということです。
② 判断の仕事
AIに相談すると、こちらが聞いていないことまで提案が返ってきます。「こういう切り口もあります」「この部分は別の方法もあります」。松浦会長も、作業中に別のアイデアが出てくるため仕事が増えていくと述べています。
提案が増えるのは、そのまま「やらなくていい仕事の候補」が増えるということです。今までは思いつかなかったから手を付けなかったことが、目の前に並びます。ここで全部拾うと、確実に仕事が増えます。増えているのは仕事量ではなく、選択肢です。
③ 段取りの仕事
1件ずつしか進められなかったものが、同時に3件動かせるようになります。これは効率化のようでいて、人間側の切り替え回数を増やします。松浦会長は、人の仕事の速度を上回るスピードで進むため、案件ごとに自分の頭も切り替えないといけないと語っています。
製造業で3種類の見積を並行で作る、建設業で複数現場の日報をまとめて処理する。どれも「待ち時間が消える」代わりに「切り替えが増える」という交換になっています。
3つとも、原因は同じ
確認・判断・段取り。この3つに共通するのは、どれも「事前に決めていない」から発生しているということです。
増える仕事と、その原因
- 決まっていないこと
- 誰が最終確認するかと、どこまで見れば出してよいかの基準
- 決まっていないこと
- 今やらないことの線引き
- 決まっていないこと
- 同時に進める上限の本数
| 増える仕事 | 決まっていないこと |
|---|---|
| 確認が終わらない | 誰が最終確認するかと、どこまで見れば出してよいかの基準 |
| 提案を全部拾ってしまう | 今やらないことの線引き |
| 切り替えで疲れる | 同時に進める上限の本数 |
つまり、増えた仕事はAIが作ったのではなく、決めていなかった分が表に出てきたとも言えます。今までは作業が遅かったので、決めなくても回っていました。速くなった途端に、決めていない部分が詰まりとして現れます。
先に決めておく3つ
導入初期に決めておくこと
- 01
最終確認する人を1人決める
全員で確認すると誰も確認しません。業務ごとに1人決めます。小さな会社なら社長か総務担当で十分です。あわせて「何を見れば出してよいか」を3つ程度に絞ります。見積なら金額・数量・宛名、といった具合です。全部を見ようとすると確認が終わりません。
- 02
「今月はやらないこと」を書き出す
AIが出してきた提案のうち、面白いけれど今は着手しないものを、消すのではなく別の場所に書き留めます。判断を毎回ゼロからやらずに済み、後で見返せます。着手するのは、決めた1つが終わってからにします。
- 03
同時に進める本数の上限を決める
同時に回すのは2件まで、のように上限を先に置きます。AIは何件でも並行できますが、確認と判断をするのは人です。上限を決めないと、人のほうが先に詰まります。
確認する人を決める話は、そのまま「誰の許可で使うか」の話につながります。**勤務先で業務にAIを使う場合は、必ず上長や会社の確認を取ってください**。会社にまだルールがない場合も、「ないから使ってよい」ではなく「ないから確認する」が先です。何を入れてはいけないかは、別記事にチェックリストとしてまとめています。
ICHI.へ相談するそれでも最初は増える
正直に言うと、上の3つを決めても最初のうちは仕事が増えます。新しい道具の使い方を覚える時間、うまくいかない出力を捨てる時間、社内に説明する時間が要るからです。ここを「失敗した」と受け取って止めてしまうのが、いちばんもったいない終わり方です。
見るべきは「今週が楽になったか」ではなく、「同じ作業にかかる時間が先月より短くなったか」です。1つの業務にしぼって、着手から完了までの時間を月に1回だけ測る。それだけで、増えている時期なのか、抜けた後なのかが分かります。
明日からできること
- いまAIを使っている業務を1つ選び、その最終確認をする人を決める
- その業務で「ここだけ見れば出してよい」項目を3つに絞って紙に書く
- 同時に進める案件の上限を決める(迷ったら2件)
- AIが出した面白い提案は、着手せずに別のメモへ移す
- 1か月後に、同じ業務の所要時間をもう一度だけ測る
参考情報
- ITmedia AI+「エイベックス松浦会長「AIで仕事が楽になると思ってたけど、真逆」 note記事作成の“苦労”明かす」(2026年8月21日): https://www.itmedia.co.jp/aiplus/article/2608/21/2000000684/
松浦会長の発言および作業内容は、上記のITmedia AI+の記事に記載された内容を参照しています。本記事のうち「増える3つ」の整理と対処は、編集部が実務の観点からまとめたものです。自社のどの業務から始めるか、確認の基準をどう置くかを一緒に整理したい場合は、運営元の合同会社ICHI(愛知県豊川市)へご相談ください。
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