- 集合研修でAIが身につかない理由
- 西尾市役所が選んだ「2〜5人・45分・年約100回」という設計
- 前半で仕組みと注意点、後半で自分の業務を扱う組み立て
- 教える側が現場の課題を拾えるという副作用
- 中小企業が同じ形をやるときの人数・時間・頻度の決め方
- 研修の前に決めておくルール
AI研修をやったのに、翌週には誰も使っていない。 社内で一度は起きる話です。講師が悪かったわけでも、社員のやる気が足りないわけでもありません。多くの場合、原因は研修の中身ではなく人数と時間の組み方にあります。
愛知県西尾市役所が、その組み方を変えた例を公開しています。1回あたり2〜5人、約45分、年間およそ100回。数字だけ見ると手間がかかるように見えますが、狙いを聞くと中小企業にこそ向いた設計です。
なぜ集合研修だと身につかないのか
西尾市が挙げている課題は明確です。数十人規模の集合研修では、一般的な知識や汎用的な活用例は伝えられる一方、参加者ごとの担当業務まで踏み込むことが難しい。 そして、研修内容を理解しても、自分の部署で使える業務が分からなければ実践につながりにくいという点です。
これは民間企業でもそのまま当てはまります。20人集めて「ChatGPTでこんなことができます」と見せると、その場では全員がうなずきます。ただ、経理の人と現場監督と営業では、使う場面がまったく違います。全員に当てはまる話は、誰の業務にも刺さらない。
同じ内容でも、人数で結果が変わる
- 一般論と汎用の活用例まで
- 自分の業務に置き換える作業は各自まかせ
- 質問しづらい
- 教える側は現場の課題を拾えない
- 後半で参加者の担当業務を直接扱う
- その場で「自分はここに使える」が出る
- 困りごとを相談しやすい
- 教える側に現場の課題が集まる
西尾市の設計を数字で見る
公開されている設計はこうです。1回2〜5人、約45分、午後4時から、年間約100回を予定。 受講後には15〜30分ほどの個別助言の時間も取っています。窓口時間の短縮で生まれた午後4時以降を学習に充てている点も、時間の作り方として参考になります。
- 西尾市の設計
- 2〜5人
- 中小企業に置き換えるなら
- 同じでよい。3人前後が話しやすい
- 西尾市の設計
- 約45分
- 中小企業に置き換えるなら
- 30〜45分。就業時間内に収める
- 西尾市の設計
- 年間約100回
- 中小企業に置き換えるなら
- 月2回から。全員が1周するまで続ける
- 西尾市の設計
- 午後4時から
- 中小企業に置き換えるなら
- 手が空く時間帯を固定する
- 西尾市の設計
- 15〜30分の個別助言
- 中小企業に置き換えるなら
- 同じ。ここが実践に変わる場所
| 項目 | 西尾市の設計 | 中小企業に置き換えるなら |
|---|---|---|
| 1回の人数 | 2〜5人 | 同じでよい。3人前後が話しやすい |
| 1回の時間 | 約45分 | 30〜45分。就業時間内に収める |
| 頻度 | 年間約100回 | 月2回から。全員が1周するまで続ける |
| 時間帯 | 午後4時から | 手が空く時間帯を固定する |
| 受講後 | 15〜30分の個別助言 | 同じ。ここが実践に変わる場所 |
年100回という数字に驚く必要はありません。 これは職員数が多いからで、社員20名の会社なら1回3人として7回で全員が1周します。月2回なら4か月弱です。
中身は前半と後半で役割が違う
西尾市の研修は2部構成です。前半で生成AIの仕組み、サービスの種類、そして個人情報・機密情報・著作権などの注意点を扱い、導入済みツールを実際に触る時間も取ります。
後半が肝心な部分で、参加者の担当業務を題材にして、AIを使える場面を講師と一緒に探します。 ここが集合研修では削られる部分です。「自分の仕事のどこに使えるか」を他人と一緒に探す時間があるかどうかで、翌週の行動が変わります。
45分の組み立て
- 1前半:仕組みと線引きできること・できないこと・入れてはいけない情報
- 2前半:実際に触る会社が決めたツールを開いて動かしてみる
- 3後半:自分の業務を出す参加者が今週困った作業を1つ持ち寄る
- 4後半:使える場面を一緒に探す持ち寄った作業に、その場で当てはめてみる
- 5終了後:15〜30分の個別相談その場で1つ作ってみる
参加者からは「自分の担当業務に置き換えて考えることができた」「資料の構成案づくりに活用できることが分かった」「少人数だったため、普段の業務で困っていることを相談しやすかった」といった声が挙がっています。「相談しやすかった」は、人数を絞らないと出てこない反応です。
見落とされがちな副作用:教える側に情報が集まる
西尾市では、情報政策課の課長が年間約100回の講師を自ら担当しています。理由は効率ではありません。各部署の課題を直接把握するためです。導入前の課題として「情報政策課が各部署の現場課題を把握しにくい」ことが挙げられていました。
研修を、教える場ではなく現場の困りごとを集める場として使っている。 これは中小企業でもそのまま効きます。社長や担当者が講師をやると、「うちの経理はここで詰まっていたのか」が分かります。外部講師に全部任せると、この情報は社内に残りません。
もう一つの工夫として、同じ部署の職員が一緒に参加する形を取っています。一人が出した使い方を、別の業務へ広げる効果を狙ったものです。3人集めるなら、バラバラの部署より同じ部署から集めたほうがよい、ということになります。
始める前に決めておく3行
研修を始めると、必ず「何を入れていいのか」の話になります。ここを曖昧にしたまま始めると、社員が実データで試して事故ります。西尾市の研修でも前半に注意点を置いています。
分厚い規程は要りません。A4一枚に3行あれば入口は守れます。「お客様の名前・電話番号・住所は入力欄に入れない」「送る前・出す前に必ず人が読む」「会社が決めたツールの上で使う」。この3行を最初の研修で配ってください。
社員が業務でAIを使う場合は、会社としての許可を先に出してください。 会社にルールがない状態で社員が個人アカウントを使うと、取引先情報や個人情報が社外に出る経路になります。個人情報保護法や取引先とのNDAに関わる話です。何を入れてはいけないかはAIに入れてはいけない情報チェックリストに5区分でまとめています。
明日からできること
- 全社員を1回で集めるのをやめる。3人ずつに分けて何回に分かれるか数える
- 1回45分・月2回で、全員が1周する月数を出す(20名なら4か月弱)
- 講師を外部に丸投げせず、社長か担当者が最低3回は自分でやる
- 参加者に「今週いちばん面倒だった作業」を1つ持ってきてもらう
- A4一枚3行のルールを作って、初回の冒頭で配る
- 終了後の15分を空けておく。ここでその場で1つ作らせる
- 1AI研修が身につかない原因は中身ではなく、人数と時間の組み方にある。数十人の集合研修では担当業務まで踏み込めない
- 2西尾市役所の設計は1回2〜5人・約45分・年間約100回。受講後に15〜30分の個別助言を付けている
- 3年100回は職員数が多いから。社員20名なら1回3人・月2回で4か月弱で全員が1周する
- 445分の後半で参加者の担当業務を題材にする。ここを削ると翌週の行動が変わらない
- 5講師は外部に丸投げせず社内の人がやる。研修は教える場であると同時に、現場の困りごとが集まる場になる
- 6始める前にA4一枚3行のルールを配る。「名前は入れない」「出す前に人が読む」「会社が決めたツールで使う」
参考情報
- キーマンズネット(ITmedia)「AIを日常使いに 愛知県西尾市役所の「少人数対話型」生成AI研修」(2026年8月24日): https://kn.itmedia.co.jp/kn/articles/2608/24/news032.html
西尾市役所の研修設計・参加者の声は、上記のキーマンズネットの記事に記載された内容を参照しています。本記事のうち「中小企業に置き換えるなら」の換算と、始める手順は、中小企業の実務の観点からまとめたものです。自社の人数・業種に合わせて社内研修を設計したい場合は、運営元の合同会社ICHI(愛知県豊川市)へご相談ください。
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