AIツール活用術

AI電話、成功率37%だった

AIは使えない、という話ではありません。どの電話を任せて、どの電話を人が取るのかを決めないまま入れると、この数字になるという話です

2026-09-09読了 約9志水 康太志水 康太

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AI電話の対応成功率は37%|任せる前に電話を3つに仕分けるのサムネイル
画像は生成イメージです。
この記事でわかること
  • 大田区のAI電話実証で、対応成功率が目標80%に対し37%だった事実
  • 同じ「80%」でも、成功率と時間削減率という別々の指標が混ざっていること
  • うまくいかなかった理由は3つとも「電話の中身」にあったこと
  • 実証の対象が防災危機管理課だったという見落とせない前提
  • 自社の電話を3つに仕分ける方法
  • 契約前に決めておく2つのこと

電話が鳴るたびに手が止まる。これを解決したくてAI電話を検討する会社は増えています。 実際、電話を受けて用件を聞き、担当者に取り次ぐところまでAIがやる仕組みは、すでに売られています。

ただ、入れる前に決めておかないと数字が伸びない部分があります。東京都大田区が実際にやってみた結果が公表されているので、そこから逆算します。

大田区で何が起きたのか

まず事実です。大田区は2026年1月、区役所にかかってくる電話をAIが受ける実証実験を行いました。AIの対応成功率は、当初80%を目標としていましたが、結果は37%にとどまりました。

この課では、1週間の電話対応がおよそ290件、1日あたり4.5時間を電話に充てていました。負担は確かに大きく、AIに任せたい動機は十分にあったことが分かります。

実証実験の要点

実施時期
内容
2026年1月
対象
内容
大田区の防災危機管理課が窓口となる区民からの問い合わせの一部
電話量
内容
1週間で約290件 / 1日あたり4.5時間を電話対応に充当
AIの役割
内容
用件の聞き取り、指名された担当者への取り次ぎ、よくある問い合わせへの回答、通話の自動テキスト化
対応成功率
内容
目標80% → 実績37%

まず、2つの「80%」を分けて読む

ここで混同しやすい点があります。この件には「80%」という数字が2つ出てきますが、指すものがまったく違います。

同じ80%でも、測っているものが違う

売る側が掲げた80%
  • 「電話対応時間を80%以上削減」
  • 測るのは、職員が電話に使う時間
  • 提供会社が2025年10月に公表した目標
実証で測った80%
  • 「対応成功率80%」が目標
  • 測るのは、AIが用件を処理できた割合
  • 結果は37%

サービスを提供する会社は、2025年10月の発表で「職員の電話対応時間を80%以上削減することを目指します」としていました。これは時間の話です。一方、実証で測られたのはAIがどれだけ用件を処理できたかという成功率で、こちらが37%でした。

ここが契約前の分かれ目になります

提案を受けるとき、「◯%削減」という数字だけを見ないでください。それが「時間」の話なのか「対応できた件数の割合」の話なのかで、意味がまったく変わります。時間が減っても、AIが取りこぼした電話を結局あとから人が拾っていれば、現場の負担は減りません。どちらの数字で成功を判定するかを、契約前に自社側で決めておく必要があります。

うまくいかなかった理由は3つとも「電話の中身」にあった

公表されている課題は3つです。どれもAIの性能というより、かかってくる電話の性質の話でした。

  • 決まった質問に回答する設計だったため、想定できていない質問が多く出た
  • 専門用語が多く、当時のAIがうまく認識できなかった
  • 高齢者からの問い合わせが多く、言語化されていない相談にAIが対応できなかった

3つ目が特に重いところです。「何を聞きたいのかが、かけている本人もまだ言葉にできていない電話」は、AIがいちばん苦手とするものです。人間なら「どうされました」と聞き返しながら一緒に整理できますが、決まった質問に答える設計のAIには、そもそも取っ掛かりがありません。

見落とせない前提:対象は防災危機管理課だった

この実証で最も見落とされやすいのが、対象部署です。公表資料によると、AIが受けたのは防災危機管理課が窓口となる区民からの問い合わせでした。

防災の窓口にかかってくる電話を想像してみてください。定型的な質問は多くありません。「うちの地域は大丈夫か」「この場合はどこに相談すればいいのか」といった、状況が人によって違う相談が中心になります。緊急性が高いものも混ざります。

つまりこの実証は、AI電話がいちばん苦手な種類の電話から試した結果だとも読めます。 37%という数字は「AIは使えない」の証拠ではなく、任せる相手を選ばないとこうなるという結果として読むほうが実務的です。

大田区の担当者はこう述べています

「職員の負担軽減につながったというところには至ってないというのが現状だが、行政現場でこういったところに対してはAIでの応対が現時点で難しいとか、課題の洗い出しはうまく進んだと思います」。やってみて、どこが無理かを特定できたこと自体を成果として扱っています。この構え方は、これからAIを試す中小企業にとっても参考になります。

自社の電話を3つに仕分ける

ここからが自社の話です。「電話をAIに任せられるか」で考えると答えが出ません。電話を3種類に分けて、任せられるものだけを渡します。

かかってくる電話は3種類に分かれる

  1. 1① 答えが決まっている電話営業時間、場所とアクセス、駐車場の有無、在庫の有無、担当者への取り次ぎ
  2. 2② 判断が要る電話見積の相談、納期の調整、値引きの可否、クレームの一次対応
  3. 3③ 言葉になっていない電話「ちょっと困っていて」から始まる相談、要件が本人にも整理できていないもの

AIに任せられるのは①だけです。②は判断が絡むので人が出ます。③は大田区で問題になったものと同じで、AIに渡すといちばん事故が起きる種類です。

そして重要なのは、①の割合は業種によってまったく違うということです。飲食店や小売店なら①が多いかもしれません。一方で、相談を受ける仕事や、案件ごとに条件が変わる仕事では、①はごくわずかです。自社がどちらなのかを、感覚ではなく数えて確かめます。

今週やること(3つ)

  1. 01

    1週間、かかってきた電話を3つに仕分けてメモする

    電話を切ったあとに、①②③のどれだったかだけを紙に「正」の字で記録します。内容までは書かなくて構いません。1週間続けると、自社の電話の構成比が数字で見えます。複数人で受けているなら、全員でやります。

  2. 02

    ①が全体の何割かを数える

    ここが判断の材料になります。①が3割に満たない会社は、今AI電話を入れても効果が見えにくいと考えられます。逆に①が半分を超えるなら、任せる価値は十分にあります。迷ったら、まず数えてから相談してください。

  3. 03

    ①の中の「よくある質問」を10個書き出す

    実際に導入するとき、そのまま設定に使えます。書き出せない会社は、まだ導入の準備ができていません。AIは決まった質問に決まった答えを返す道具なので、その「決まった答え」を先に人間が用意する必要があります。

契約前に決めておく2つのこと

仕分けが終わったら、導入の話に進む前に2つだけ決めておきます。

導入前に自社で決めること

何をもって成功と呼ぶか
決めておかないとどうなるか
「対応時間が減った」で判定するのか「AIが処理できた割合」で判定するのかを決めていないと、提案側の数字をそのまま受け入れることになる
AIが取れなかった電話を誰が拾うか
決めておかないとどうなるか
取りこぼしを結局同じ人が拾っていると、電話の総量は変わらないまま、確認の仕事だけが増える

2つ目は特に見落とされます。AIが取れなかった電話は消えません。どこかで人に戻ってきます。戻り先を決めておかないと、担当者の負担は減るどころか、AIの対応履歴を確認する手間が上乗せされます。

電話の内容を扱うときの注意

AI電話は通話内容をテキスト化して保存する仕組みを持つものがあります。顧客の氏名・連絡先・取引内容が音声から文字になって残るということです。勤務先で導入を検討する場合は、必ず上長・会社の確認を取ってください。どこにデータが保管されるか、学習に使われないかを契約書で確認しないまま進めると、個人情報保護法や取引先との秘密保持契約に触れる可能性があります。

これだけは覚えて帰ってほしいこと
  • 1大田区が2026年1月に行ったAI電話の実証で、対応成功率は目標80%に対して37%だった
  • 2ただし「80%」は2つある。売る側が掲げた「対応時間80%削減」と、実証で測った「成功率80%」は別の指標。どちらで成功を判定するかを自社で先に決める
  • 3うまくいかなかった理由は3つとも電話の中身。想定外の質問、専門用語、言語化されていない相談
  • 4対象は防災危機管理課。定型質問が少なく緊急性も高い、AIがいちばん苦手な電話から試した結果とも読める
  • 5自社の電話は3つに分かれる。答えが決まっている電話だけがAIに渡せる。判断が要るものと、言葉になっていない相談は人が取る
  • 6まず1週間、電話を3つに仕分けて数える。答えが決まっている電話が3割に満たなければ、今はまだ早い

参考情報

  • 株式会社ソフツー「ミライAI、大田区の実証実験に採択!」(2025年10月1日・PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000096.000028096.html
  • テレビ朝日系(ANN)「電話対応「苦手」6割超 「AI電話」で業務負担軽減へ 大田区の実証実験で見えた課題」(2026年9月5日): https://www.kab.co.jp/news/article/16866271
この記事の情報の扱いについて

実証実験の名称・対象部署・AIの機能・「対応時間80%以上削減」という目標値は、提供会社が公表した資料に記載された内容です。対応成功率37%という結果、電話の件数、課題の内容、および大田区イノベーション事業担当課長の発言は、上記のテレビ朝日系(ANN)の報道に記載された内容を参照しています。本記事のうち「2つの80%の読み分け」「対象部署から読み取れること」「電話を3つに仕分ける方法」「契約前に決める2つのこと」は、中小企業の実務の観点からまとめたものです。自社の電話をどう仕分けるか、どこから任せるかを一緒に整理したい場合は、運営元の合同会社ICHI(愛知県豊川市)へご相談ください。

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#AI電話#電話対応#業務効率化#中小企業#AI導入#生成AI#経営者
志水 康太

志水 康太

合同会社ICHI 代表 / AIコンサルタント

理学療法士として医療・介護の現場で10年以上働いたのち、2023年に合同会社ICHIを設立。三河・東三河の中小企業でAI顧問・研修・アプリ開発を手がけています。記事は現場で実際に使えるかを基準に書いています。

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