- 2026年7月22日、豊川市KITTOで開かれたAI活用ワークショップの開催レポート
- 経営者・幹部9名が付箋で自分の業務を棚卸しし、AIに任せるための「マニュアル」を1つ作った90分
- 懇親会が個別相談に発展し、参加者が自分の実務課題をその場で動かした
2026年7月22日(水)の夜、愛知県豊川市の複合施設「KITTO」で、東三河の中小企業経営者・幹部を対象にしたAI活用ワークショップが開かれました。主催は株式会社ピーアンドピーグループ(彦坂良太郎代表取締役)と株式会社Lif(田中亜矢子代表取締役)の共催、登壇は合同会社ICHI.の志水康太。参加したのは地域の経営者・幹部9名です。この日のゴールはただ一つ、「自分の仕事を1つ、AIに任せてやってもらう」こと。話を聞いて終わりの座学ではなく、参加者が自分の手を動かして、その場で成果物を1つ持ち帰る体験型の90分でした。本稿はその開催レポートです。
「意識の高い話」ではなく「手を動かす90分」だった
AIのセミナーというと、最新技術の紹介や「これからはAIの時代」といった総論で終わることも少なくありません。この日のワークショップは、そこを意識的に避けていました。構成は大きく4つ。冒頭でAI活用の現在地を共有したあと、すぐに参加者自身の業務を棚卸しするワークに入り、その業務をAIに任せる形へ組み替える実演を挟み、最後は全員が自分の業務でAIを動かすハンズオンで締める、という流れです。
当日の流れ(4部構成)
- 01
現在地の共有
生成AIを使う企業は増えているが「導入したのに成果が出ていない」ケースも多い。だからこそ現場任せにせず、経営者・管理職自身が使い方を理解する必要がある、という前提を共有した。
- 02
業務の棚卸し
付箋を使い、自分の仕事を「カテゴリー」と「作業」に分解。各作業にAIでできそうかどうか(〇×△)の見立てを付け、スマホで撮影した。
- 03
AIマニュアル化の実演
1つの業務を教材に、AIが作業を仕分けし、手順を「マニュアル」に整える流れをライブで実演した。
- 04
全員ハンズオン
各自が棚卸しした業務で同じ手順を実行し、自分専用のAIマニュアルづくりに取り組む。
まず「自分の仕事」を付箋で棚卸しする
ワークの最初の一歩は、パソコンでもAIでもなく、付箋とペンでした。参加者はまず、自分の仕事を大きめの付箋に「カテゴリー」として最低3つ書き出します(例:会議、営業、マネジメントなど)。次に、それぞれのカテゴリーの下に、実際の「作業」を横長の付箋で4〜5個に分解していきます。
- カテゴリーを大きめの付箋に最低3つ書き出す(例:会議、営業、マネジメント)
- 各カテゴリーの下に、実際の作業を横長の付箋で4〜5個に分解する
- 作業ごとに「AIにできそう〇/できなさそう×/微妙△」の見立てを付ける
- カテゴリーごとにスマホで撮影し、後半の実演で使う
正解を当てるワークではありません。狙いは、ふだん一続きにこなしている仕事を、任せられる単位までいったんバラして「見える化」することにあります。撮影した写真は、後半でAIに渡す材料になります。
この棚卸しは、特別な道具がなくても自社でできます。付箋がなければ紙とペンでも十分です。「自分の仕事を分解して、どこがAIに任せられそうか見立てる」という作業そのものが、AI活用の出発点になります。
ICHI.へ相談するAIに仕事を任せる鍵は「マニュアル」だった
ワークショップの中心にあった考え方が、「AIに仕事を任せるには、その仕事のマニュアルが要る」というものでした。ここで言うマニュアルとは、分厚い手順書のことではありません。1つの作業について、目的・必要な入力情報・手順・判断基準・出力の形式、といった5〜6項目を言葉にしたものです。
登壇した志水は、これを「人に仕事を頼むときと同じ」だと説明しました。細かく伝えないと、人もAIも見当違いのことをする。ただ人間は周りの様子や過去の経験から補ってくれるのに対し、AIはそこが苦手なので、任せる作業ほど手順と判断基準をはっきりさせる必要がある、という整理です。
そしてこのマニュアルは、作った本人・会社の「資産」になります。「あの人にしかできない」という属人化した仕事も、目的と手順を言葉にしておけば引き継げるようになる。実際にこうしたマニュアルは「スキル」「技」と呼ばれ、売り買いされ始めているという話も紹介されました。
実演では、共催者である株式会社Lifの田中亜矢子代表の業務を教材に使いました。田中代表が棚卸しした人事コンサルティングの仕事(経営者へのヒアリング、企画書の作成、規定づくりなど)をAIに渡すと、AIはまず「どの作業がAIに向くか/人がやるべきか」を仕分けします。たとえば経営者ヒアリングそのものは、信頼関係づくりやその場での深掘りが必要なので人が担う一方、ヒアリング項目の事前設計や、聞き取った内容の整理はAIで進められる、といった具合です。
続けて2つ目の手順を実行すると、仕分けした作業の1つについて、実際に使えるマニュアルの形まで整えてくれます。これを作業ごとに積み重ねていけば、いつでも中身を少し差し替えるだけで、自分なりの進め方を再現できるようになります。
この「作業をAIマニュアルに整える」考え方は、自社でも試せます。以下は、ワークショップで扱った手順をもとにした汎用的なプロンプト例です。まず自分の作業を1つ選び、[ ]の中を自分の言葉に置き換えて、ふだん使っているAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)に貼り付けてみてください。
あなたは業務設計の専門家です。以下の作業を、AIに任せられる形の「マニュアル」に整理してください。 ■ 対象の作業 [例:新規のお客様に送る初回のお礼メールを作成する] ■ 私の立場・状況 [例:従業員10名ほどの会社で、営業を担当している] 次の項目を埋める形で、マニュアルとして出力してください。 1. 目的(この作業は何のために行うか) 2. 必要な入力情報(作業前に用意すべき材料) 3. 手順(AIに実行させるステップ) 4. 判断基準(迷ったときに何を優先するか) 5. 出力の形式(文章/表など、どんな形で出すか) 不明な点があれば、埋める前に私に質問してください。
出力されたマニュアルに「ここは自分のやり方と違う」と感じる部分があれば、そのまま追記して直していけます。AIの答えが的外れに見えるときは、こちらが伝えた情報が少ない場合がほとんどです。遠慮なく補足して、自分仕様に育てていくのがコツです。
ICHI.へ相談する山場は懇親会:「聞く」から「自分の課題を動かす」へ
このワークショップがふつうの勉強会と違ったのは、終了予定の時刻を過ぎてからでした。会は9時ごろまでの懇親会に移りましたが、登壇した志水はテーブルを回りながら、参加者一人ひとりの具体的な相談にそのまま付き合い、実質的な個別コンサルティングの時間になっていきました。
ある参加者は、自社の在庫状況を調べて、どの順番で作業を進めるかを管理する仕組みを作りたい、という課題を持ち込みました。「話を聞いた」で終わらせず、その場で自分のノートパソコンにAIの開発環境(Claude Code)を入れるところから着手します。
ここで立ちはだかったのが、Windowsパソコン特有のつまずきでした。作業の記録を残すための「Git」という仕組みが見つからない、パソコンがその置き場所(PATH)を把握できていない、といった、初めての人にはまず解けない類のエラーです。志水はこれに一つずつ付き合いながら、解決の実演として「詰まった画面をスクリーンショットで撮って、そのままAIに見せて聞く」という方法を見せていきました。エラー文の意味が分からなくても、画面を撮ってAIに渡せば、次にどこを触ればいいかを教えてくれる。この「分からないことをAIに聞きながら進める」体験そのものが、大きな学びになっていました。
別の参加者は、手書きの記録を毎回Excelに打ち込んでいる作業を持ち込みました。この転記に数か月がかりで取り組んでいるとのことで、写真を読み取って入力する方法や、数字の読み取りを複数回チェックして精度を担保するやり方を、その場で一緒に検討しました。
共通していたのは、どの相談も「セミナーで聞いた一般論」ではなく「自分の会社の、今困っている作業」だったことです。手を動かす設計にしたからこそ、その延長で自分の課題がそのまま動き出す。ここがこの日のいちばんの山場でした。
個人情報や社内利用の注意点(守りの視点)
勤怠や在庫、お客様に関する情報など、業務のデータをAIに扱わせる話は、懇親会でも自然に出てきました。便利さと同じくらい大事なのが、この「守りの視点」です。次の点は必ず添えておきます。
- 取引先やお客様の個人情報を扱うときは、個人情報保護法や秘密保持(NDA)、本人の同意といった論点があります。自社の情報かどうかで扱いが変わります。
- 勤務先の業務でAIを使う場合は、必ず上長や会社の確認を取ってください。「バレなければいい」という無断利用は、懲戒や信頼の失墜につながります。
- 個人情報を含むデータを入れるなら、入力内容が学習に使われないか、保管はどこか、といった安全性を確認できる契約プラン(法人向けプランなど)を選びます。
ワークショップでも、個人情報を扱うならセキュリティのしっかりした法人向けプランを使うこと、他社の情報はあらかじめ同意を得ることといった注意が共有されていました。ツールの力を活かすほど、この足元の確認が効いてきます。
アンケート結果(満足度と個別相談の希望)
ワークショップ終了後、参加者9名にアンケート(Googleフォーム)を実施しました。満足度は5段階で平均4.4でした。
- 回答数
- 4名
- 回答数
- 3名
- 回答数
- 1名
- 回答数
- 1名
- 回答数
- 4.4 / 5.0
| 満足度(5段階) | 回答数 |
|---|---|
| 5(非常に満足) | 4名 |
| 4(満足) | 3名 |
| 3(普通) | 1名 |
| 未回答 | 1名 |
| 平均 | 4.4 / 5.0 |
「今日いちばん役に立った内容」(複数回答)では、1つの業務を深掘りしてAIマニュアルに整える実演と、全員での作成ハンズオンが、それぞれ5名で最多でした。「すぐ試したい」が6名、「興味はあるが時間がかかりそう」が3名。そして「個別に相談したい」と答えた方が9名中5名と、過半数に上りました。
数字にあらわれているのは、その日のうちに「自分でも試せそうだ」という手応えが生まれ、しかも参加者の過半数が次の一歩として個別の相談を求めた、という点です。話を聞くだけの会では、この「相談したい」という具体的な意欲まではなかなか出てきません。手を動かす設計にしたことが、そのまま結果に表れていました。
三河でも「手を動かすAI活用」は始まっている
この日のワークショップが示したのは、AI活用が「一部の先進企業だけの話」ではなく、東三河の身近な経営者が、自分の業務を1つずつ棚卸しして手を動かせば進められる、ということでした。付箋で仕事を分解し、1つの作業をマニュアルに整え、自分のパソコンでAIを動かす。派手さはありませんが、こうした地に足のついた積み重ねが、属人化の解消や日々の時短につながっていきます。
自社での進め方をもう少し具体的に知りたい方は、AI業務効率化の始め方(最初の1週間でやる3ステップ)もあわせてお読みください。豊川市の業種別の使い方は豊川市の中小企業向けAI活用ガイドに、会議や打ち合わせの記録を整える具体策は議事録をAIで整理する方法にまとめています。
- 1扱ったのは「AIの話を聞く90分」ではなく「自分の仕事を1つAIに任せて帰る90分」。参加は東三河の経営者・幹部9名
- 2最初にやったのは付箋での棚卸し。カテゴリーを3つ以上書き、各作業を4〜5個に分解し、AIにできそう〇/できなさそう×/微妙△を付ける
- 3任せる鍵は道具選びではなく「マニュアル」。作業を手順の形にできれば、AIに渡せる仕事になる
- 4個人情報や取引先情報を扱うなら、勤務先の業務では必ず上長・会社の確認を取る。無断利用は懲戒と信頼の失墜につながる
- 5アンケート(9名回答)は満足度5段階で平均4.4。「すぐ試したい」6名、「個別に相談したい」9名中5名
- 6最も役に立ったのは実演とハンズオンで各5名。手を動かす形式が地域の経営者に効いている
このワークショップのように「自分の業務を1つ、AIに任せる」ところから始めたい事業者の方へ。運営元の合同会社ICHI.(みかわAI学校)では、業務の棚卸しからAIマニュアルづくり、社内での使い方のルール整備まで、東三河の中小企業に合わせて伴走しています。ご相談はトップページのお問い合わせからどうぞ。
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